西 亜里沙
今回のツアーでは実際に公演を行った劇場をそのまま借りて、舞台の作り込みをする時間をとる事ができた。
音響、照明も含め、朝9時から劇場に入り、昼食もそこそこに、夜22時の退間時間ギリギリまで、一つ一つ時間をかけ仕上げて行った。
楽曲の変更部分は、劇場に入ったらすぐテクニカルスタッフに見せなくてはならないため、早朝から集まり稽古をした。
楽曲の変更、衣裳の変更、照明合わせ、音合わせ・・・・。
同じ曲を何度も繰り返し、微妙な照明の変化を決めて行った。
演者はビデオを撮り、どんな舞台の中で演奏しているのかを感じながら演技を高めて行った。いつもに増してプロデューサーの目が厳しかった。
細部に渡り細かい駄目出しが出された。動きだけではない、内面の部分・・・。
動きだしや音を出すタイミング。顔の向き、視線、振りの大きさ・・・・。
「TAOだから出来る舞台作り」だった。
今回、女性の大太鼓というチャンスを頂いた。
ここで求められたものは、「女性だから出来る、魅せる大太鼓。横打を取り入れ、優雅で、美しく、色気がある。もちろん、強さとしっかりした音は絶対に必要」
大太鼓の横打で音をならす事は簡単ではない・・・。全身を使い、大太鼓用の太いバチをしっかりと握り込むパワーが必要だった。しかし、パワーだけでも駄目。力任せに振り回しては、美しさが無くなってしまう。この要求に応えられるのか?無理じゃないか?でも無理なんて口が裂けても言えない。
横打の時の体の向き、顔の向き、打点、バチの見え方、フレーズ感・・・。
要求されている事が解らず、一生懸命やっているつもりが全く駄目で、プロデューサーの罵声が飛んだ。
「おまえら本当に女か?そんな魅力の無い女の演奏なんか見たく無い。おまえらの体はそんくらいしか動かんのか?発想もチープ過ぎて話にならん。」
出来なくて、悔しくて、涙が出た。
何度も演目から外されそうになった。
頼み込んで見てもらい、意見を頂きながら作って行った。「その方向で作り上げろ」そう言われた時は凄く嬉しかった。
まだまだ完成の域ではないけれど、また一つ、無理だと思っていた事が現実になった。
今回、赤坂ACTシアターへ足を運んで下さったコシノジュンコさんがおしゃっていた、「貴方達の舞台は素晴らしいわ、文句の付けどころも無い。でもね、作品に完成なんて無いの、どんどん新しいものを取り入れるの。音楽というジャンルからもっと視野を広げて、新しい感性を磨く事が大事。新しい事にチャレンジするということは、とても勇気のいる事で、誰でも出来る事じゃない。でもTAOなら出来る。」
私がTAOに入って15年。
毎回、無理難題にぶつかる。イメージが解らなかったり、動き的に無理だったり。でも、やれてしまうのだ・・・。
プロデューサーの罵声が私の起爆剤となって、ぶっ倒れるまでやってやろうじゃないか!という気持ちにさせる。
その先に新しいものが見えてくるのだ。
学生の頃は、出来るだけ体育の授業を休みたがっていた私が、TAOに入って、意外と体力がある事を知った(笑)これから先、本当に体が動かなくなるまでずっとチャレンジし続けたい。
